突然の出来事だった。
「血盟を解散する。」
クシのリアルの都合で
しばらくリネージュに来れないと言うのだ。
今で言う「プチ引退」と言ったところか。
リアルの都合なら何も言う事は出来ない。
確かに彼も忙しい身だ。
僕のナイトのレベルも
レベル48になっていた。
この「ちょ〜初心者血盟」で
みんなとのライバル意識の中で
がんばってきた結果だ。
すでにDK変身の出来る
レベル52のプレイヤーもいたが
それでもPK戦になっても
すぐには死なないくらいの強さになっていた。
クシの一時引退と
血盟の解散とで
僕はフリーになった。
クランマークの無い自分の名前。
せめて自分で称号をつけ
次のレベルに向かって
ひとり黙々と狩りを続けていた。
そう。
また一人に戻っただけなんだ。
相変わらず初対面ではろくに話しを出来ない僕は
自分から新しい血盟に飛び込む事が出来なかった。
不思議と勧誘される事も無かったので
結局いつもの一人だった。
やまねこと言っていた彼は
みなつきと言う新しいキャラを作り
別のクランに所属していた。
彼は解散になってしまった
ちょ〜初心者血盟の元血盟員を数人
自分の所属する血盟に加入させていた。
それがヘッドハンティングだったのか
単純に良い血盟だったからなのか
それは判らないが
とにかく大部分は同じ血盟に吸収されていた。
ちょ〜初心者血盟が
荷物整理とかで僕とクシだけしかいなかった時に
すでにみなつきからは
何度と無く誘いがあった。
でも完全になくなった訳ではないこの血盟から
クシだけを置いて出て行きたくはなかった。
血盟が完全に消滅してから数日間
ただただ狩りをする事に没頭していた。
それでも
無理な狩場には行かなかったので
経験地の増えるペースは少なかったが。
そうやって一人で狩りをしていると
ふと気が付いた事があった。
うっとうしい全体チャットを
常にOFFにしている僕には
ポーションを使った時と
モンスターを倒した時のDorp報告以外
チャット欄が動く事がなかったのだ。
たまに狩場で
元血盟員と会って会話する時以外
白い文字の自分の名前さえも
チャット欄を流れる事がなかった。
そう。
何かが足りない事を感じていたのだ。
まったく流れないチャット欄。
見る事の出来ない緑色の文字。
「@ちゃー」
と入力しても
クライアントはただ空を切るだけ。
今まで通りの一人は
もう自分には無理なんだ。
いくら初対面が苦手でも
やっぱりゲームは楽しい方が良い。
みなつきにWISを送り
血盟加盟を承諾した。
数十分後。
自分が狩りをしていた火田民村に
ひとりのプリンスが来てくれた。
名前はShelly。
シェリー血盟の血盟主だ。
あまり他の血盟を意識した事が無かったので
実はクラン名を聞いた事が無かった。
実際にはかなり大規模な血盟だったのだが。
いくつかの血盟としての注意事項を聞き
自分としても納得出来たので
久しぶりのコマンドを打ち込んだ。
/join
久しぶりに流れる緑色の文字。
一斉に流れる挨拶。
やっぱり
僕はこれを待っていたんだ。
既に加入していた
元血盟員達との久々の再会。
そして
新しい仲間との出会い。
自分よりレベルの上のプリンスを目指して
自分をどこまで強く出来るのか。
そしてどれだけ楽しく
力強い
ひとつの血盟になれるのか。
レベルは48.
ひとつの目標である50を少しだけ意識出来た。
さぁ
シェリー血盟で走るぞ!
僕の最初の想いは
果たして叶う事だ出来るのだろうか。
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