修理屋物語 エピソード4 ひとり

隠された渓谷。

ナイトで始めると最初に降り立つ
リネージュの世界だ。

ここは初心者ゾーンで
プレイヤー同士の斬り合いが出来ず
村に戻れば無料で回復をしてもらい

敵には同族意識がないので
ひとつの敵を叩いても
他の同じ仲間の敵が寄ってこない。

つまり敵に囲まれたりせず
すべての敵に対してタイマンで戦う事が出来る。


家庭用ゲーム機で
いくつものロールプレイングゲームをこなした。

ドラゴンクエストが
まだファミコン対応でまったく騒がれていなかった頃
なんとなく面白そうでやってみた
後に大ヒットになってしまった。

富士通のFM77で
ウルティマが出来た頃
必死になってダンジョンを歩いていた。


いつからかゲーム機のロールプレイングゲームは
自分ひとりで戦うのではなく
何人かのパーティーを組める様になり

そしてそのキャラそれぞれが
AIを搭載して自分で勝手に動いたり
プレイヤー自身が操作出来たり

とにかく
一人で戦う事の意味が
まったく無くなってしまっていた。


リネージュでは
それぞれのキャラクターの向こうに
それぞれの「個人の意識」を持つ
それぞれの「個人」があって

自分以外の
すべてのキャラクターの中に
自分以外の意識が動いている。

自分ひとり以外で
敵を倒そうとすれば
そこには必ず
自分以外の意識が絡んでくるんだ。


俺には苦手だった。
今までいくつもの仕事に就いたけれども
必要以上に人に接する事は無かった。

知らない女性にだって
自分から声を掛けた事なんかない。


ましてやゲームの中の世界
今まで通り
ひとりでいいや!って思っていた。

敵とだってひとりで戦える。
知らない場所にだって
いつかはひとりで行ける。


そう思いたかった。


僕は何に対しても慎重派だった。

いや、臆病だったと言うのかもしれない。

自分より強い敵とは戦わない。
常に自分が有利な狩場にいる。

だからアデナも経験地も増えなかった。
レベルが上がらなければ強い敵とも戦えない。
強い敵と戦わなければ得られるアデナも少ない。

得られるアデナが少なければ
強い武器や防具が買えない。
強い武器や防具が買えなければ

当然いつまで経っても強くなれない。

ひとりで勝手に悪循環を始めていた。
ゲームそのものがマンネリ化し始めた。


そう。
これではネットワークゲームの意味がない。
キャラクターの向こうにいる誰かと
力を合わせて
強い敵に立ち向かうからこそ
オンラインゲームじゃないのか?
それが本当のパーティープレイじゃないのか?

自分の中で
いくら自問自答しても
「ひとり」から抜け出す事が出来なくなっていた。


ある日
ひとつの事を思い出した。

自分にだって
普通に友達がいるじゃないか。
いくらゲームの中でひとりだって
普通の生活の中ならひとりじゃない。


ひとりの友人を
リネージュの世界に巻き込む
その作戦が決行されたのは

思い立ってからすぐの翌日の事だった。



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