修理屋物語 エピソード2 そしてカノープスへ

ダガーとレザージャケット。
そしてロウソクが2本。

僕たちが冒険を始める為の
必要最小限の装備だ。

まずダガーを装備してみる。
手ぶらだったキャラクターの両手に
長めの剣が持たれる。

レザージャケットを装着。
見た目は変わらないが
左の数値が少し減る。

どうもこれがアーマークラスと言うヤツの様だ。
減れば減るほど良いらしい。

ロウソクを点けてみる。
自分の周りがぽわっと明るくなった。

これで準備は完了だ。
とにかくRPGの基本
お金を貯めて
装備を良くしなければ。

勢い良くフィールドに飛び込んだ


までは良かった。

よちよち歩く緑色の敵に襲い掛かる。
振り抜き、敵は血を出して…


倒れたのは自分だった。

駄目だ。
この敵は強いのか。

背中の丸いコイツだ。


一撃で返り討ちに遭う。

オークと言う名の敵を発見。
RPGの基本の敵は
スライムとオークだ。

勢い良く剣を振り下ろす。


回転するように
血を撒き散らしながら
ディスプレイ右側に
リスタートを促すウィンドが開く。


街とフィールドの往復。
増えない経験地。

何がいけない?
回復薬が必要なのか?

RPGは
ドラゴンクエスト
ファイナルファンタジー

もう10年以上やってきてる。


まったく知らない分野のゲームでも無いのに
どうしたら良いのかさっぱり判らない。

街のNPCの話しを聞いてみる。
ヒントの欠片もない。

最初に何をしたらいいのか
助けてくれるキャラクターもいない。

ログオンして30分も経たずに
リネージュと言うゲームに疑問を持ち始めた。


「レベル5まではね、
街の南西にある案山子を叩く事で
レベルアップ出来るよ」


子供の頃から恥ずかしがり屋で
初対面の人と話すのが苦手で。

一度友達になってしまえば
バカな事ばかり言えるのに。

ゲームでも同じで
大規模オンラインゲームで
キャラクターひとりひとりの画面の向こう側に人がいて

そう考えると
なかなか知らない人に話しかけられなかった。


半分いじけて街に佇んでいて
ボーっとしている時に
チャットウィンドに流れた文字だった。


案山子を探すと
そこには人が溢れていた。

ひとつの案山子に何人もの人が叩いている。
何やら楽しく話しながら叩いている。

何だか横入りする勇気がない。
空いている案山子もない。


結局叩けなかった。
引っ込み思案にもほどがある。


人の少ない時間。

そう、結局深夜や昼間
そんな案山子が空いている時間に叩いて叩いて

レベル5までアップ。
これできっとフィールドの敵も倒せるはずだ。


結局のところは
鹿やらウサギを倒す事になるのだが。


レベル6まで上げる事が出来た。
貯まったお金でショートソードを購入。

街の犬商人からシェパードを買って
残り少ないお金で
ウッドベックまで飛んで犬を引き出し
戻って来てすぐに
狩り中に死んじゃったりとか。

自分のRPGへの思いとは裏腹に
なかなか貯まらないお金と経験値

そして
どこに行っても人・人・人


自分の分身であるキャラクター達で
フィールドが飽和状態である事が
一番耐えられなかった。

あちらこちらで起こるいざこざ。
相手が見えないせいか
妙に虚勢を張って暴言を吐くヤツ

既に
このサーバーには歴史が出来ている。
古くからいるヤツが偉くて
新しいヤツは弱い。

人間社会と同じなのか。
折角の異世界に
人間社会と同じ悪臭を
漂わせようとしているのか。


「最近、新サーバーが出来たんだって。」

「カノープスって言うらしいよ。」


聴いた瞬間腹は決まった。

知り合いがいる訳でもない。
ものすごい時間をかけて
今のキャラクターを育てた訳でもない。

歴史の浅い
新しいサーバーに移住だ。

そう思った時
既にゲーム終了のウィンドを開いていた。



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